預貯金の仮払いの創設|相続法改正案の内容とは?

2018-07-26

■はじめに

相続に関する民法改正案の中で、預貯金について、遺産分割前の仮払いを可能にする制度の創設が提案されています。

 

■預貯金の仮払い制度の創設は何を意味する?

以前、裁判所は、預貯金については相続開始と同時に相続分に応じて分割され、それぞれの相続人が各自単独で相続分について金融機関に払戻請求でき、遺産分割の対象にならないとしていました。しかし、平成28年12月に最高裁が判例を変更して、預貯金も遺産分割の対象になるものしました。
そのため、相続開始後、遺産分割がなされるまでは、相続人の一人から払戻しを請求しても、金融機関はこれを拒むことができることが明確になりました。

そうすると、被相続人の預貯金を使わないと相続債務や葬儀等費用の支払いなどができない様な場合に、困った事になってしまいます。

そこで、民法改正案では、遺産分割前でも一定額であれば仮払いを認める制度の創設が提案されています。

 

■仮払いの2つの手続き

・金融機関の窓口で請求

相続人の一人が、金融機関の窓口へ行って仮払いの請求をする場合、各口座ごとの預貯金額×3分の1×その相続人の法定相続分、といった基準で上限額を定める提案がされています。

なお仮払いを受けた場合は、後日の遺産分割の際に具体的な相続額から差し引かれます。

 

・家庭裁判所の保全処分を利用する方法

家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをする際の、保全処分として、仮払いの申立てをする方法が考えられています。

手間とコストがかかり、家裁に認めてもらうために仮払いが必要であることの疎明も要しますが、家裁が認めてもらえる限りにおいて、上記のような上限額は特に設けられません。