民法改正案による配偶者の住居相続への影響について

2018-07-22

■はじめに

2018年の3月13日の国会にて、相続法の一部分が改正される法律案が提出されました。
今回はその中で、住居の相続に関わる点についての変更をご紹介します。

 

■配偶者の居住権の創設

・配偶者が継続して自宅に住むことができる「配偶者の居住権」

現行法では、故人と同居していた配偶者が自宅に継続して居住するのを確実にするためには、遺産分割などで所有権を取得するしかありません。遺産総額の中で不動産は大きな価値を占める事が多いため、遺産分割で自宅の相続を受ける代わりにその他の金融資産(預貯金など)はほとんど他の相続人に持って行かれるという結果になることも生じます。

それを踏まえ、民法改正案では、「配偶者の居住権」の創設が提案されています。この「配偶者の居住権」は、亡くなった被相続人が所有していた住居に配偶者が同居していた場合、無償で継続してその住居に住むことができる権利のことを指します。

・配偶者の短期居住権と長期居住権

この「配偶者の居住権」には、「短期の居住権」と「長期の居住権」が提案されています。

短期の居住権は、相続開始により当然に生じる権利で、遺産分割によりその住居を誰が相続するか確定する日、または相続開始から6カ月が経過する日のいずれか遅い日まで、の権利とされています。結果的に住居を立ち退く状況になるにしても、それまでの猶予期間を法的に与えるものです。

長期の居住権は、配偶者が原則として終身、その住居に住み続けることができる権利です。この権利は、遺言、死因贈与、遺産分割によって取得することができる権利です。法律上当然に与えられるものではありません。例えば遺産分割で、自宅不動産は長男が相続するが、妻が居住権を取得するという内容にすることができます。
この長期居住権は、所有権を相続するよりも評価額としては低くなる(評価方法については検討中のようです)ため、その分、他の金融資産(預貯金など)を多く配偶者が取得することが可能になります。

 

■20年贈与を受けた配偶者の保護

婚姻して20年経過すると、居住用不動産を配偶者に贈与した場合に贈与税の2000万円までの控除が受けられます。ただ、その後相続が開始した際に、その贈与が「特別受益」として、遺産に持ち戻してそれぞれの相続人の取得分を計算することで、配偶者の取得分が減るという結果になりえることがひとつのネックになっていました。

そこで今回の改正案では、この贈与については原則として遺産に持ち戻す必要は無いとすることが提案されています。